第9回 バックヤード・パーティー (その3) ベース・プレイヤー欠席のまま、ファースト・セットをスタートした。お馴染みウィリー・ディクスンの「Little Red Rooster」や、マディー・ウォーターズの「Catfish blues」など「お約束」のシカゴ・ブルースを演奏した。来客たちはバンド演奏に聞き入るような様子も無く、前菜を楽しみながらそれぞれ勝手に過ごしている。俺たちはナンの気持ちの「おごり」も無く、ストレートに演奏した。ベースが無いとはいえ、トムのブラシのタイミングは実に心地よく、俺のロックン・ロール魂をズにノせる。ベースが無くたって結構ルンルン♪気分だ。 更に3曲演奏した後、マディーの「Can't be Satisfied」から「Rollin' & Tumble」に移行するメドレーなど演奏した。これらの曲はコアなヒッピー達の間でも大ヒットした曲らしいので、その当時、青春を謳歌した主催者 (女性) の興味を引いた。好きな曲だったらしく、BBQチキンをつまみ食いしながら踊りだしてきた。 「イエーッスッ!」 「やっぱり一緒に体を動かしてこそ、一体感が生まれるってモンよっ (江戸弁) 」などと調子にのって吹きまくっていた。 彼女のダンス・スタイルはビートを全く無視した自然体で、幻想的に、時には祈るように、クニャクニャ踊っている。これはまさに当時モノホン (本物) のヒッピーだったに違いない!「ウッド・ストック」や「ラスト・ワルツ」などのフィルムでもよく見かけるダンス・スタイルだっ! 大半の来客たちはガヤガヤとディナーを楽しんでいて、バンド演奏にはまだまだ見向きもしないが、俺たちはもとヒッピーのダンサーと、軽快なトムのシャッフルにノせられてスッカリいい調子だ。さらに、60年代ヒッピー文化をフラッシュ・バックさせるため「キャンド・ヒート」のヒット曲や「カントリー・ジョー&フィッシュ」といったブルースに影響を受けた当時の白人グループの曲など次々に演奏した。ディナーを終えた来客たちも徐々に踊り出してきたので、「プロコルハルム」の「青い影」など演 (ヤ) ってサービス (?) した。ジェームスはこの手の「フォーク・ロック」系の曲はお手の物だ。彼もかつて、全米を放浪したヒッピー・ミュージシャンだったからだ。 |
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