V.A. / Detroit Blues Factory
vol.1
(Blues Factory BF1000) [LP] |
Side A
- Harmonica Shaw : Detroit Playboy
- Willie D. Warren : Door Lock Blues
- Eddie Burns : Don't Let Money Change You
- Robert Noll : 24 Hour Blues
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Side B
- The Butler Twins : Hello Chicago
- Johnny "Yard Dog" Jones : Sweet Dreams
- Willie D. Warren : Baby Like To Boogie
- Billy Davis : Troubled Shoes
- Robert Noll : Check-Out Time
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デトロイトという街にブルースの火が絶えたことはなかった。確かに、ジョン・リー・フッカー以降の大スターは生まれなかったし、コレクター・レーベルによる発掘作業も、他の地域に比べ見向きもされなかったと言っても過言ではないだろう。1973年の第一次オイルショックの影響をモロに受けたデトロイトは、街自体が死に絶えたかのように見えた。しかし、その様な中でも、ブルースは息づいていた。
そして、1987年。ブルース・ファクトリーというレーベルから、70/80年代を生き抜いてきたデトロイトのブルースマンを紹介するコンピレーション・アルバムが発表された。それがこの「Detroit
Blues Factory vol.1」である。
このアルバムは、まさに「唐突」という言葉がふさわしいリリースであった。デトロイトのブルース・シーンに注目するブルース・ファンなど皆無と言っていい時代だったからである。今でこそ、ハーモニカ・シャー、ウイリー
D. ウォーレン、バトラー・ツゥインズ、ジョニー "ヤード・ドッグ" ジョーンズなどは、それぞれソロ作を発表し、その存在を世界中にアピールしているが、当時はエディ・バーンズ以外は全くの無名人ばかりだったのだから。
いや、彼らを知らなかったのは世界のブルース・ファンだけではない。地元デトロイトでも知っている人は少なかったようだ。ライナー・ノーツを担当したエリック・スミスは、こう書いている。
これは、デトロイトで作られた、デトロイト人による、デトロイト人のための音楽である。
Don't look now Chicago - but Detroit is on your back !!
「大物」エディ・バーンズは、さすがに貫禄を見せるが、アルバム全体の印象はまさにダウンホーム。と言っても、内容に不足があるわけではなく、それぞれがタフで聞き応えのあるブルースを披露している。唯一の白人であるロバート・ノールも(歌の軽さは仕方がないにしても)大健闘だ。
そして、このアルバムの発表を契機に、デトロイトのブルース・シーンが再び注目されるようになる。先に挙げたように、多くのブルースマンがソロ作を発表し、今日の活況に結びついている。
残念ながら、このアルバムはあまり流通しなかったようだ。Blues Factoryというレーベルは今も健在だが、在庫はカセットのみだという。私自身も海外の中古LPリストで一回見たことがあるだけだ。それだけに早期のCD化が求められる。
なお、最近日本でも人気急上昇中のハーモニカ・シャーの表記がShawになっているが、誤記ではなくジャケットにこの様に記載されている。
V.A. / Detroit Blues Live at
Lou's
(ASM / No Cover Productions) |
- Nikki James : Phone Call
- James Glass Get To Gettin' Band : Spoonful
- The Garfield Blues Band : High Temperature
- City Limits Blues Band : Don't Take Advantage Of Me
- Steve Gornall & The Blue Cpllar Blues Band : Turnpikin
- Sharecroppers Of Soul : You Don't Love Me
- Howling DiablosI : Nobody In Detroit
- The Chisel Brothers with Thornetta Davis : Yesterday I Sang
A Love Song, Today I Sing The Blues
- Square Business Blues Band : I Wish You Would
- 3 Of Us : In Love For Keeps
- Jeff Grand : I'm Diggin' You, Baby
- The Alligators : Two Fingered Handshake
- Motor City Bluez Project : Back To The Street
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日本でもチャリティ・コンサートは行われるが、欧米の比ではない。毎晩どこかでこれらのコンサートが行われていると言っても過言ではないだろう。
このアルバムは、1993年にミシガン州自閉症協会(ASM)の呼びかけに賛同したデトロイトのブルース・バンドが行ったチャリティ・コンサートの模様を記録したものだ。
このコンサートは、その後ウエィン郡自閉症協会(Way/Sac)に引き継がれ、3枚のアルバムが発表された。当初はそれぞれの協会から発売されたが、現在はNo
Cover Productionsが「Blues From The Heart Series」として販売している。ここではそれに倣い、一括して紹介していきたい。
「Detroit Blues Factory vol.1」に比べ、こちらは一転して若手揃い。ベテランの重厚さも捨てがたいが、本当の意味でのデトロイト・ブルース・シーンを知りたいならば、やはり若手も聴かなきゃ話にならない。
とは言え、ブルース・ロック的な演奏が多いのも事実。苦手な人にはちょっとキツイ内容だろうか。
そんな中でも、ロニー・ブルックス作でジョニー・ウインターも取り上げた(4)で活きの良い演奏を披露するシティ・リミッツ・ブルース・バンドや、アレサ・フランクリンの(8)を取り上げたシセル・ブラザースなど聴きどころも多い。
このアルバムをレコーディングした直後にソロ作を発表したジェームス・グラスは、自己アルバムではジミ・ヘンドリックスばりの引き倒しギターを披露していたが、ここでは抑えめにジョン・シェマの素晴らしいヴォーカルを引き立てている。ファンキーな(10)や、(13)なども素晴らしいが、歌が弱いのが残念だ。
色々と欠点はあるが、現在進行形のデトロイト・ブルース・シーンからの挨拶状といったアルバムと言ったところだろう。
試聴は、こちら。
入手先
apple Jamさんに近日入荷予定です。
No Cover Productions
V.A. / Blues From The
Heart Vol.1
(Way. SAC / No Cover Productions) |
- Uncle Jesse White : She Stays Out Every Day and Night
- Blues Survivors : Cross Eyed Cat
- The Blue Suit Blues Band : Lucky Man
- The Garfield Blues Band : Hold It Right There
- Mimi Harris & The Snakes : Snake Blues
- Howling Diablos : Business Man Legs
- Jeff Grand & The Grandmasters : I'm Good
- Johnnie Bassett & The Blues Insurgents : Mean Feelin'
- The Alligators : Saved
- Brigade : Boat Gig
- Detroit Blues Band : Hello Little Girl
- City Limit Blues Band : One Way Out
- Sharecroppers of Soul : Monster In My Pocket
- The Chisel Brothers featuring Thornetta Davis : Have My Husband
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1995年に行われた自閉症患者のためのチャリティコンサートを記録したシリーズ第二弾。主催がWay/SACに引き継がれたため、Vol.1となっている。
内容の方も、若手中心だった「Detroit Blues Live at Lou's」に比べ、新旧のブルースマンが勢揃いし、デトロイト・ブルース・シーンをより俯瞰できる内容となっている。
トップバッターは、デトロイトの奇人(?)ピアニスト/ハーピストのアンクル・ジェシー・ホワイト。ピアノを弾きながらホルダーに取り付けたハーモニカを吹くのだが、そのホルダーがとにかく奇抜だ。余りにも凄いので一番下に写真を貼っておくことにしよう。
ソウル風味が心地良い(3)に、「Detroit Blues Live at Lou's」に比べ成長の跡が著しいガーフィールド・ブルース・バンドの(4)といった血圧が上昇する好演が続いた後に、ミミ・ハリスのソウルフルなヴォーカルが素晴らしい(5)に突入。バックのザ・スネークスも素晴らしい盛り上げだ。
このアルバムと前後して、初のリーダー作をNo Cover Productionsから発表したジョニー・バセットは、その後キャノン・ボールやブラック・マジックから相次いでリーダー作を発表することになる。スタジオ・ミュージシャンとしての実績はあったものの、当時はまだ無名の存在。しかしヴェテランらしい素晴らしいプレイを披露する。
既にアルバムを発表していた、アリゲーターズやデトロイト・ブルース・バンドなどは安定した力を見せるし、(10)のブリゲードも、面白いアレンジを聴かせてくれる。
そして最後は、デトロイトのファンク・バンド、ビッグ・チーフと共に2枚のアルバムを出し、このライブの直後にソロ作を発表したソーネッタ・デイヴィスをフューチャーしたシセル・ブラザーズ。さすがに上手い歌を聴かせてくれるし、バックも好演。コンサートの最後を飾るにふさわしい素晴らしい演奏だ。
Uncle Jesse White
試聴は、こちら。
入手先
apple Jamさんに近日入荷予定です。
No Cover Productions
V.A. / Blues From The
Heart Vol.2
(Way. SAC / No Cover Productions) |
- Robert Jones : Don't It Make You Feel
- Mudpuppy : Lovin' Machine
- Willie D. Warren : Reconsider Baby
- Big Dave & The Ultrasonics : If I Don't Jump
- Lonnie Shields : Fistful Of Dollars
- Steve Nardella Trio : Uranium Rock
- Madcat & Kane : Act Like You Love Me
- Big Jack Johnson : Stop The Killing
- George Bedard & The Kingpins : Justine
- Uncle Jesse White : When You Kiss Me
- Robert Noll : Blues From The Heart
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1996年に行われた、チャリティ・コンサートBlues From The Heartの第二集。
トップを飾るのは、ナショナル・スティール・ギターの弾き語りの、ロバート・ジョーンズ。この曲のみスタジオ録音だ。それにしても、色々な人がいるもの。ジョーンズは1956年デトロイト生まれの生粋のデトロイトっ子。父親はミシシッピーから、母親はアラバマからデトロイトに来たらしいが、ラジオやレコードでカントリー・ブルースを学んだらしい。ギターの他にもハーモニカ、フィドル、マンドリン、バンジョーを演奏する。ブルースのみならず、アフロ・アメリカンのフォーク・ソングを歌うシンガーだ。
それにしても、このアルバムは充実した内容だ。ヴェテランのウイリー D. ウォーレン、アンクル・ジェシー・ホワイト、「Detroit
Blues Factory vol.1」にも登場したロバート・ノールから、デトロイト・コンテンポラリー・ブルースの代表格マッドパピー。そしてデトロイトに来ていたビッグ・ジャック・ジョンソンやロニー・シールズまで、盛りだくさんの内容だ。
既に数枚のソロ作を出し、好き者の間では話題騒然(?)のマッドプッピーだが、ここでは割とオーソドックスなブルース・ナンバーで攻める。そして、ウォーレンの濃密なブルース!ヴェテランでこその味わいが充分楽しめる。同じくヴェテランのノールも、(11)のイントロで物真似大会をやるなど盛り上げてくれるし、(5)(8)の外様勢も完璧な内容だ。
ビックリしたのが、エレキ・ギターとハープのデュオの(7)。ハープのマッドキャットが暴れまくること!!ビッグ・デイブのところのデヴィット・モリスもハープが上手いし、デトロイトも技巧派ハーピストが多い街だ。
いやー、楽しめた!!
試聴は、こちら。
入手先
apple Jamさんに近日入荷予定です。
No Cover Productions
V.A. / Blues From The
Heart Vol.3
(Way. SAC / No Cover Productions) |
- Bobby Murray Band : It's Still Called The Blues
- Willie D. Warren : Things I Used To Do
- Franklin Street Blues Band : Rise
- Father & Son Blues Band featuring Jim McCarty & Dylan
McCarty : Back On My Feet Again
- Chicago Pete : A Woman Loves A Loser
- Alberta Adams with Johnnie Bassett & The Blues Insurgents
: Messin' Around With The Blues
- Hastings Street Blues Band : Down On Hastings Street
- Motor City Josh : Big City Hillbilly
- Detroit Blues Band : I Don't Know Why
- Randy Volin & The Sonic Blues : Little Love
- Chisel Brothers featuring Mimi Harris : Steal Away
- The Butler Twins : Alabama Boogie
- Blue Spirit Tribe : I've Always Been Crazy
- Joce'lyn B & The Detroit Street Players : God's Child
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1997年の第三集も、前作に負けず劣らず楽しめる。
まずは、ベイ・エリアから1996年にデトロイトに移ったボビー・マーリーの登場だ。ロバート・クレイが高校のパーティーでアルバート・コリンズを見てブルースに目覚めたという話は有名だが、何とその場にボビーも居たという。そのロバート・クレイともしばしば一緒に演奏していたというが、何と言っても1988年から務めているエタ・ジェイムス・バンドのギターリストとしても仕事が有名だ。デトロイトに来た時は、地元の雑誌Big
City Bluesで記事が組まれたほど。期待に応える素晴らしい演奏を聴かせてくれる。余談になるが、彼は日本人とアイルランド人の親を持つ日系二世。顔はほとんど日本人だ。
このアルバムも、若手とヴェテランがバランスよく配置されている。若手の代表格はボビー・マーリーになろうが、クールなコンテンポラリー・ブルースを聴かせる(3)や(10)、そしてBlueSlimが強力に推薦するモーター・シティ・ジョシュの(8)など、かなりの力を持ったニュー・ジェネレーションが揃っている。
それに対しヴェテランも、相変わらず濃密なブルースを聴かせる(2)や、シカゴ・ピート、バトラー・ツゥインズ、デトロイト・ブルース・バンド、そしてジムとディランの親子共演が実現したファーザー・アンド・サン・ブルース・バンドなど聴きどころが満載だ。
特に、この第三集の特徴は、女性ヴォーカルの活躍が目立つこと。ヴェテラン同士が粋なサウンドを聴かせる(6)や迫力満点の素晴らしいヴォーカルを聴かせる(7)、(11)。ちょっと力は落ちるが、(13)のクリス・ペターソンも健闘している。
そして最後は、普段は挑発的なステージを繰り広げているジョスリン B によるゴスペル。1998年にインターナショナル・ブルース・タレント・コンペティションで準優勝した実力を遺憾なく発揮。このアルバムを印象的なものにする見事なエンディングだ。
試聴は、こちら。
入手先
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No Cover Productions
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