V.A. / Blues For Big Town
(Green Line srl CDCHESS-1013) |
- John Lee Hooker : Walkin' The Boogie (alt. take)
- John Lee Hooker : Blues For Big Town
- John Lee Hooker : Big Fine Mama
- John Lee Hooker : Blues For Christmas
- Calvin Frazier : Lilly Mae
- Calvin Frazier : Have Blues Will Travel
- Katie Watkins : Trying To Get You Off My Mind
- Big Ed & His Combo : Biscuit Baking Mama
- Big Ed & His Combo : Superstiition
- Bobo Jenkins : Democrat Blues
- Bobo Jenkins : Bad Luck And Trouble
- Eddie Burns : Treat Me Like I Treat You
- Eddie Burns : Don't Cha Leave Me Baby
- Texas Red & Jimmy : Black Snake Blues
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ジョー・ヴォン・バトルが制作し、チェスにリースされた作品を集めた「Blues For Big Town」(P-VINE
PLP-6061)という名コンピレーションがあった。このCDはそのLPの曲順を変えただけのストレート・リイシューだ。と言っても、どうもそのLPから起こした海賊盤っぽい。
ジョン・リー・フッカーの4曲は、「The Complete 50's Chess Recordings」(MVCE-30005-6)で聴ける様になったが、いずれも珍しいものばかり。(1)は、ギターを早送りした「スピード・アップ・ギター」や二重唱といった「特殊効果」を排した別テイク。奇を衒ったシングル・バージョンより、いつもながらのブギを聞かせるこちらの方が格段良い。ピアノが入った(2)や、ホーンの入った(3)(4)などバラエティに富んだ選曲だ。
カルヴィン・フレイザーは、このコラムに何度も登場するデトロイトの重要人物。戦前はロバート・ジョンソンと活動を共にしていた時期もあったが、戦後はエレクトリック・ギターを抱えデトロイト・ブルース・シーンの発展に一役かった。3回も吹き込んでいる(5)は彼の代表曲と言えるだろう。
たった一曲のレコーディングだけで消えてしまったケティ・ワトキンス。(7)はサックス・カリのバンドがバックに付いた、彼女の唯一の作品である。もう少し活動の場を広げていたら、と悔やまれるなかなかの歌いっぷりのシンガーだ。
(8)(9)のビッグ・エドとは(12)(13)でも登場するエディ・バーンズのこと。現在でも元気で活動を続けるギターリスト/ハーピストである。サニー・ボーイ
I 丸出しのハープが気持ちいい前者ではピアノの好サポートもあり抜群の出来。ギターを弾く後者もウォーキング・ベースが心地よい佳作だ。
このアルバムの最大の聞き物は、ボボ・ジェンキンスの初録音でもある(10)(11)であろう。彼の経歴等については別項に譲るが、1931年の大不況を南部で経験した彼は、(10)でアンゼンハワー率いる共和党政権に対して痛烈な批判を展開している。「民主党はあんた達を独立させたのに、あんたらは彼らを選挙で負かせた....」という直接的な歌詞は、トラブルを恐れたチェスの指示で一部変えられたという。ロバート・リチャードの素晴らしいハープが活躍する素晴らしいブルースだ。
ラストのテキサス・レッドもケティ・ワトキンス同様詳しい経歴は分かっていない。彼が残した3曲の作品のうちの1曲が(14)だ。バックは同じくサックス・カリ・オーケストラ。(7)のB面として発売されたもの。シャウター・タイプのシンガーだ。
こうして聴くと、さすがにチェスのお眼鏡にかなった曲揃いである。是非とも正規盤で再発してもらいたい好アルバムだ。
V.A. / Bobo Jenkins Presents
: Big Star All Stars
(P-VINE PCD-5641) |
- Bobo Jenkins : I Love That Woman
- Bobo Jenkins : Heard The News?
- Bobo Jenkins : New 44 Blues
- Bobo Jenkins : First Left Home
- Bobo Jenkins : Nothing But Love
- Blind Child : Walking With The Devil
- Steel Wheels : Door Lock Blues
- Steel Wheels : Detroit Jump
- Blind Child : How Can A Honkey Sing The Blues?
- Blind Child : When A Fool Gets To Drinking
- Buddy Folks : My Baby Done Left Me
- Buddy Folks : Body What You Trying To Do?
- Bobo Jenkins : You Will Never Understand
- Bobo Jenkins : Tell Me Where You Stayed Last Night
- Little Junior : I've Got My Eyes On You
- Little Junior : Don't Turn Your Love On
- Chuck Cole : Ha, Baby
- Chuck Cole : My Bonney
- Robert Lockwood Jr. : Selfish Ways
- Robert Lockwood Jr. : Down Home Cookin'
- Big Roger Thomas : My Woman So Fine
- James Walton : Tell Me What You Got
- James Walton : Shady Grove
- Walton Brother Band : Midnight
- Syl Foreman : Before I Leave You
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1916年にアラバマ州で生まれたボボは、12歳の時に家を出てメンフィス、ミシシッピーと流れ歩いて数々の辛苦を舐めた。1944年にデトロイトに移り住んだ彼は、そこで初めてギターを手にすることになる。1952年の"Democrat
Blues"のヒットを受けてデトロイト・ブルース・シーンの仲間入りを果たした彼には、大きな夢があった。幼い頃から独立心の強かった彼は、いつの日か自分のスタジオを持ち自前のレコードを発売することである。南部では黒人差別と戦い、チェスからは一銭の印税も受け取らなかった彼は、ブルースマンのためのレコード会社が必要だと痛感していたのである。その夢を実現させ興したレーベルがBig
Starなのである。
Big Starからは数枚のシングルと3枚のアルバムが発売された。その中の3枚目のアルバムにシングル作品を加えたものが本作である。(1)から(12)がアルバム「Detroit
All Purpose Blues」(通称イエロー・アルバム)に収録されていたものである。1枚目と2枚目のアルバムについては別項で紹介しよう。
まずはイエロー・アルバムに収録された曲から紹介するが、1950年代生まれの若い世代のビッグ・スター・バンドをバックに、4人のフロントマンが代わる代わる登場する。
ブラインド・チャイルドは、ボボやシカゴ・ピートなどに曲を書いていた人で、長い間ブルース・ラジオのDJも務めていた人。技巧派ではないがディープな声を持つ人で、ブルース衝動がほとばしる熱いブルースを聴かせてくれる。
スティール・ホィールズは、デトロイトのNo Coverから単独アルバムを出していたウイリー D. ウォーレンのこと。これが彼の初録音だ。「ギター・スリムにギターを教えた」とか「オーティス・ラッシュ・バンドに在籍中にギターの低音弦を低くチューニングして弾いていたのがエレクトリック・ベースの始まり」などの眉唾物の話が多いが、彼の奏でるブルースは本物。彼には特別の思い入れがあるが、それは別項に譲ることにする。なお(8)は、後にバトラー・ツゥインズが"Hello
Chicago"という名前で録音した曲である。
モダンな感覚を持つビッグ・スター・バンドをバックに、強烈なダウンホーム臭を発散するのは1916年生まれのバディ・フォークス。1977年にこの様なブルースが録音されたことが奇跡とも言えよう。
(13)以下のシングル集は、1960年代に録音され発売されたもの。ロバート・ロックウッド Jr. は別格としても、別項の「Motor
City Blues」に参加しているリトル・ジュニア・キャナディがかろうじて「有名」なだけで「これ誰?」級のローカル・ミュージシャンが見事に並ぶ。
詳しい経歴などはライナー・ノートに詳しいので省略するが、いやー、本当に黒い!
レコード会社が見向きもしない様なブルースマンのシングルをコツコツと出していたボボの心意気を感じるアルバムだ。
V.A. / 3 Shades Of The Blues
(Relic 7110) |
- Eddie Kirkland : Train Done Gone
- Eddie Kirkland : You Know I Love You
- Eddie Kirkland : Blood On Your Hands
- Eddie Kirkland : Love You Til The Day I Die
- Eddie Kirkland / Falcons : So Pretty Baby
- Eddie Kirkland / Falcons : I Tried
- Eddie Kirkland / Falcons : I'm So Tired
- Eddie Kirkland : Back Bone
- Mr. Bo : Love My Life All Over
- Mr. Bo : Until The Day I Die
- Mr. Bo : Hard Times Once More
- Mr. Bo : The Train
- Ohio Untouchables : She's My Heart's Desire
- Ohio Untouchables : You Love Is Real
- Ohio Untouchables : I'm Tired
- Ohio Untouchables : Forgive Me Darling
- Ohio Untouchables : What To Do
- Robert Ward / Ohio Untouchables : Up Town
- Ohio Untouchables : She's My Hert's Desire
- Robert Ward / Ohio Untouchables : Hot Stuff
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1960年前後にルパインに残されたモダン・ブルース集。
エディは、ジャマイカ生まれのアラバマ育ち。1948年にデトロイトに移り、ジョン・リー・フッカーのバックでギターを弾いていたことでも有名な人だ。
それにしても、この人のテンションは異常に高い。トレイン・ピースの(1)、ワンコード(正確にはワンコードではないが)でズンズン突き進む(2)は、バンドの推進力も手伝い血圧が高くなる。
(5)-(7)はバック・コーラスにファルコンズ(!)が加わり、一転してR&B風味。後にキング・カーティス・バンドをバックに起用したアルバムを作ったり、オーティス・レディングとのツアーに参加したり、カプリコーンのセッション・プレイヤーになったりした「奇人」振りの原点がここにある。
ミスター・ボーはB.B. キングに影響されたモダン・ブルースを得意とする人。録音数は少ないが、どれもが上質の内容を持った優れたブルースマンだ。ここに収録された4曲は、完全にB.B.
キング・スタイルではあるが、数あるB.B. フォロワーの中でもトップ・クラスの名演であろう。
1970年代にはファンクの牽引車であったオハイオ・プレイヤーズの前身がここに収録されたオハイオ・アンタッチャブルズ。エディやミスター・ボーと共に彼らの録音が残されていたのは、何とも1960年前後という時代を物語っている。
R&Bナンバーが中心だが、ブルージーな曲や格好いいインストの(20)などがあり興味を掻き立てられる。
どこから聴いても大興奮。これだからデトロイト・ブルース・シーンは面白い。
V.A. / Motor City Blues : Ann
Arbor Blues & Jazz Festival 1973
(P-VINE PCD-1978) |
- Chinner Mitchell / Mack Collins : Introductions
- Little Junior : I Got My Eyes on You
- Joe L. : Please Mr. Foreman
- Bobo Jenkins : 24 Years
- One String Sam : I Need $100
- Johnnie Mae Matthews : Send You Back to Georgia
- Washboard Willie : Wee Baby Blues
- Dr. Ross : Boogie Disease
- Boogie Woogie Red : The Viper Song
- Baby Boy Warren : Too Many Drivers
- Eddie "Guitar" Burns : Better Watch What You're
Doing
- Mr. Bo : Don't Want No Woman
- Eddie Kirkland : I Got the Blues
- Bobo Jenkins : Reelin' & Rockin'
- Baby Boy Warren : She's Fine
- Boogie Woogie Red : Red's Boogie
- Joe L. : In the Evening (When the Sun Goes Down)
- One String Sam : I Got to Go
- The Partymakers Inc. : Move It
- John Sinclair : Interviewed by Fred Flame
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V.A. / Motor City Blues : Ann
Arbor Blues & Jazz Festival 1973
(Total Energy Records Ner-3019) |
- Bobo Jenkins : 24 Years
- Baby Boy Warren : Too Many Drivers
- Dr. Ross : Boogie Disease
- One String Sam : I Need $100
- Eddie Kirkland : Mojo In Her Backbone #
- Eddie Burns : I Call It Love #
- Bobo Jenkins : Reelin' & Rockin'
- Washboard Willie : Do You Wanna Jump #
- Dr. Ross : Chicago Breakdown #
- Eddie Kirkland : I Got the Blues
- Boogie Woogie Red : The Viper Song
- Mr. Bo : Don't Want No Woman
- Bobo Jenkins : She Wanna Sell My Monkey
- Washboard Willie : Wee Baby Blues
- Baby Boy Warren : She's Fine
- Joe L. : Please Mr. Foreman
- Little Junior : I Got My Eyes on You
- Boogie Woogie Red : Red's Boogie
- Johnnie Mae Matthews : Send You Back to Georgia
- Eddie Burns : Better Watch What You're Doing
- Joe L. : In the Evening
- One String Sam : I Got to Go
注 : #は、(P-VINE PCD-1978) に未収録の曲。
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マジック・サムのライブで有名なアン・アーバー・ブルース・フェスティバル。毎年有名ブルースマンが登場していたが、1973年は地元デトロイトのブルースマンが大集合した年であった。
それにしても、これだけのローカル・ブルースマンが集合したとは奇跡としか言いようがない。その辺の苦労話は、楽しい想い出と共にクリエイティヴ・ディレクターを務めたジョン・シンクレアがライナーの中で語っている。
これだけのメンバーを前に、語ることはほとんどない。モダン・ブル−スの傑作"Please Mr. Foreman"と、ダウンホームの極致とも言えるワン・ストリング・サムの"I
Need $100"が並ぶアルバムなど他に例を見ないだろう。しかも、そのどちらも最良のブルースなのだから。
タフでラフなデトロイト・ブルースを充分堪能できる素晴らしいライブ盤だ。
なお、Total Energy Records盤はP-VINE盤に収録されていたジョン・シンクレアのインタビューを除き、4曲追加したもの。
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