2004年の年賀メールで「またしても面白いCDが出来たぜ!もうじきリリースするよ!」と伝えてくれたのは、CeePeeVee RecordsのオーナーのClaes Parmland氏。彼は共同経営していたヴィンテージ・ギター・ショップを手放し、CeePeeVee
Recordsの経営に専念するそうだ。もちろん彼が所属するバンド、Blues Down Townでの活動も継続。
スウェーデンのブルース・シーンをリードするレーベルから出来たてのアルバムが届いた。
このアルバムは、Thomas Hammarlund、Sven Zetterberg、Greger Andersson
( KnockOut Greg )、Thomas Grahnという4人のフロントを各々のバンドから抜擢されたミュージシャンがバックアップするスタジオ・ライブだ。
タイトルからも判るように、彼らのルーツ=演奏を始めた頃に好んで取り上げた曲をカヴァーしたものでオリジナルは一曲も収録されていない。
僅か3日間で録音を終えたらしいが、長年演奏し続けたであろう曲ばかりなので、ぶっつけ本番とは思えない完成度だ。
KnockOut Greg
まずは、スウェーデンで一番熱いバンド、KnockOut Greg & BLUE WEATHERのリーダーでハーモニカ奏者であるGreger
Andersson。
(1)でサニー・ボーイ・ウイリアムソンIIの曲を軽くカヴァー。自己のバンドでは西海岸風ジャンプ・サウンドを売り物にしているが、シカゴ物をカヴァーしても、どこか自分の色が出ると言うものだ。
(7)では、あのジェリー・マッケンの名曲をほぼ完璧にコピー。彼の素晴らしいタイム感とアンプリファイドした時の野太い音のルーツはジェリー・マッケンだったのだ!Fredrik
Gustafssonのピアノも気持ちよく響く。
これまたスタンダードの(11)は、Sven Zetterbergとのデュエットで。ここではGreghはハーモニカではなくギターを弾いている。元々ギタリストとしてスタートしただけあってなかなかの腕前。
彼は、スタックス初期のアルバート・キングをカヴァーした(13)でもギターを披露。アルバートは彼の最初のアイドルだったという。
Thomas Grahn
Blues
Down Townのリーダーで、ハーモニカ・プレイヤーのThomas Grahn。彼はブルースの研究家でもあり、Jefferson誌などにも記事を投稿している。本当に色々なことを知っており、また珍しいコレクションも多数所有している。私事で恐縮だが、リトル・ウォルターのインタビューが収録されたCD-Rを戴き狂喜乱舞している。
(2)は、コブラ時代のオーティス・ラッシュの曲。原曲ではリトル・ウォルターがハーモニカを吹いていた。Grahnのハーモニカはさすがだが、やっぱりラッシュと比べると歌が弱すぎる。特筆すべきはSvenのギター。歌に切り込む鋭角的なギターが格好いい!!
マディ・ウォーターズの(5)は、I'm Readyと同じセッションで録音された曲で、よく似た曲。敢えてI'm Readyを選ばず、この曲を選んだのは70年代の始めにイギリスのSyndicate
Chapterというレーベルから発売されたLPに収録されていたからだという。
(12)はジュニア・ウェルズのステイツ録音のカヴァー。ジュニアとエイシズが共演したヴィンテージ・シカゴの名作だ。
(16)は同じくジュニア・ウェルズのチーフ録音。原曲はアール・フッカーのギターとジュニアのクロマチックが絡み合う名曲だが、ここではGrahnがギター、Gregがクロマチック・ハープを担当している。Grahnは今話題のDVDに収録されている1969年アメリカン・フォーク・ブルース・フェスティバルを直接見ていると言い、その時以来アール・フッカーのファンだという。しかしGrahnのギターとGregのクロマチックとの絡みなどは、こういった企画物でしか聴くことは出来ない。ギターもハーモニカも良い雰囲気だ。
Blues
Down Townの紹介ページ
Sven Zetterberg
知名度実力共にスウェーデンNo.1のSven Zetterberg。ギター良し、歌良し、ハーモニカ良しで日本にもファンが多い。
そのSvenは、(3)でジミー・リードをカヴァー。ちょっと意表をついた選曲だが、やっぱりジミー・リード人気は古今東西問わず根強いものだ。彼も若い頃には夢中になって聴いたんだろうなあ。
(6)はチェッカー時代のリトル・ミルトンの曲。Svenお得意のマイナー・ブルースだが、アンドリュー・ブラウンが1983年に発表したアルバムからの物を参考にしているという。何れにしろ、ソウルフルなヴォーカルとギターが光る素晴らしい出来だ。
(9)は、ジョ・ジョ・ウイリアムスがアトミックHに残した作品。デルマークから出されているアルバム「Chicago Ain't
Nothin' But A Blues Band」で聴くことが出来る隠れた名作だ。Svenのギターが50年代シカゴの雰囲気を醸し出しているが、Gregのハーモニカが実に良い味を出している!
(15)はまたしてもアンドリュー・ブラウンが1967年に 4 Brothersに残した作品。しかしSvenがアンドリューのファンだとは知らなかった。絶対的なアイドルで絶大な影響を及ぼしたという。確かに現在の彼のスタイルを聴くと、モダンでソウルフルなスタイルのアンドリューから影響を受けているのは納得出来るが、モダンなブルースマンは他にも大勢いる。驚きつつもちょっと嬉しい逸話だ。
Thomas Hammarlund
元KnockOut Gregのギタリストで、現在はBlue Hammerというバンドのリーダーを務めているThomas Hammarlund。
(4)はマジック・サムのアルバム「Give Me Time」の中でエディ・ボイドが歌っていた曲。ルーツと言うには発表年が新しすぎるが、やっぱりサムが好きなんだろうなあと感じさせるチョイスだ。
タンパ・レッドの(8)は、ロバート・ナイトホークの好演でも知られる曲。ここでは、タンパ / ナイトホーク直系のスライドを聴かせる。
続く(11)もナイトホークユナイテッドに録音したブギ。バンドのノリもピアノの転がり具合もカッコいいが、何と言ってもSvenのハーモニカが素晴らしい。
(14)は、ホップ・ウイルソンのスロー・ブルース。アルバート・キング系の鋭角的なギターが気持ちいい。
本文中に何度も書いたが、ありがちなカヴァー集と違い、深い愛情が感じられるアルバムに仕上がっている。この辺りはビッグ・ウォルター・ホートンに捧げた
Horton's
Briefcase にも通じるコンセプトを感じる。
スウェーデンを代表する豪華ミュージシャンが集まったことにより、スウェーデン・ブルース・シーンの入門編として聴くとこも出来る。
繰り返しになるが、ブルースに対する愛情をヒシヒシと感じる素晴らしいアルバムと言えるだろう。
2004年作品
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