Blues Down Town

Downtracked
(CeePeeVee Records CPVCD-501)

  1. As Long As The World Go Round
  2. Two Gddamn' Kings
  3. I Had My Fun
  4. The Hoodoo Man Is Gone
  5. Evil Chaser
  6. 5:15 Blues
  7. That's All Right
  8. No Mail Blues
  9. Teardrops Falling
  10. Give Me Another Chance
  11. Garbage Man
  12. Roller Coaster
  13. I Ain't Gonna Cry No More, For You
  14. The Man In The Dark Corner
  15. You Better Believe It
  16. Deep Down South

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先日レビューした"Horton's Briefcase"が縁で、そのCDの発売元のCeePeeVee Recordsとコンタクトを取ることが出来た。もちろん先方は日本語は読めないのだが、彼らのCDが紹介されているのを知ってメールを送ってくれたのだ。
メールの送り主は、Claes Parmland氏。CeePeVee Recordsのオーナーで、自身もギターリストだとのこと。"Horton's Briefcase"でも、Sven ZetterbergやThomas Grahn、Sture Elldinのバックでギターを弾いている。
また、ストックホルムでVintage Guitarsというヴィンテージ専門のギターショップを経営しているという。ウェブ・サイトを覗かせていただいたが、いやー、思わずよだれが垂れる商品が並んでいる!

そのClaes Parmland氏が、自らが参加しているBlues Down Townというバンドの2ndアルバムを送ってくれた。フロントを務めるのは"Horton's Briefcase"でもプレイをしていたThomas Grahn。シカゴ・ブルースを主体に、テキサスやウエスト・コースト・ブルースを演奏しているという。その活動歴は長く、Thomas GrahnやベースのLennart Fagerstromは、シカゴでBig Jack JohnsonやJohnny Christianとの演奏歴もあるという。まあ、観光に行ってシットインさせていただいただけでも「演奏歴がある」事になるのだろうけど...。


ジュニア・ウェルズとジョージ・スミスに捧げられたこのアルバム。オリジナルが9曲にカヴァー曲が7曲という構成だ。
1曲目からラテン調のリズムに3rdポジションのハモニカが乗っかり、一瞬ジュニアのようなフレーズも聴くことができる。ギターのTomasが歌う自作のシャッフルを挟んで、3曲目はリトル・ウォルターのバージョンを下敷きにした"I Had My Fun"。シカゴ系の軽快なシャッフルは手慣れたものだ。ハモニカも気持ち良く鳴っている。
"The Hoodoo Man Is Gone"は、そのタイトル通りジュニアに捧げられたものだが、1stポジションのハモニカ・スタイルからはジュニアの影響は感じられない。"Horton's Briefcase"でのホートンのスタイルは、なかなかの健闘だったので、むしろウォルター・ホートンからの影響が大きいのであろう。
タイトル曲である"Evil Chaser"は、ギターのTomas Grahnをフューチャーしたインスト。う〜ん、なんと形容したらいいのだろうか。想像力の乏しい私には、ベンチャーズが演奏する「キャラヴァン」を連想してしまう。
ピアノが入って、Claesがテキサス風のギターを気持ち良く弾く自作シャッフル"5:15 Blues"の後は、大スタンダードの"That's All Right"。テンポをアップさせて、"You Don't Love Me"と"Up The Line"を足して二で割ったようなアレンジを施している。最初に聴いたときは違和感を感じたが、何度も聴いていると案外マッチしている。新解釈の成功例とまでは言えないまでも、意欲的なアレンジは評価できる。
9曲目の"Teardrops Falling"は、ジョージ・スミスの曲。ただし、1978年に、Hittin Heavyというレーベルから発売されたシングルのB面に収録されていたもの。いやー、マニアック!
その後も、マディも取り上げていた"Garbage Man"と、ボ・ディドレー作でリトル・ウォルターの名演で知られる"Roller Coaster"を快調にとばす。彼らのカヴァーする曲は、どうもマニアックなものが多いようだが、15曲目の"You Better Believe It"は、Harmonica Slim (Travis Blaylock) が、1956年にVitaから発売したシングルのB面に収録されていた曲だ。"The Rockin' Blues" (VITA 8002) というLPでも聴くことが出来たが (Willie Egan名義の"Come On" (Relic CD-7047)でも聴くことが出来た) 、よくぞまあこんな曲を引っぱり出してくるものである。

全体的な感想だが、ハモニカはまあ良い感じで鳴っているが、ボーカルがちょっと弱い。特に3曲で歌うTomasの歌はいただけない。シカゴからテキサスまで器用にこなすClaesのギターは聴きどころが多い。3曲で客演するPelle Pianoのピアノも好サポートだ。
オリジナル曲も多いし、珍しい曲を持ってきたりアレンジに工夫を凝らしたり、独自色を出そうとしている姿勢は痛いほど感じる。これで良いシンガーが付けばもっと面白いアルバムが作れるのではないだろうか。
いずれにしろ、スウェーデン・ブルース・シーンの懐の深さを感じたアルバムだ。

追記
Tomasが使用しているアンプはスウェーデン製のJMS Harmonica Amp。このアンプは、フェンダー・ベースマンのコピー・モデルで、ハモニカ用に改良されているらしい。スウェーデンの小さな会社が何台か作ったらしいが、既に倒産して入手不可能という話もある。
彼はその他にも1961年製Fender Consertと1952年製Fender Pro Ampも使用し、それとAstaticのマイクを組み合わせているらしい。

また、彼はジョージ・スミスの研究家としても知られていることが、その後に分かった。
スウェーデン語で書かれているので、読むことは出来ないが、彼がJefferson誌に寄稿したジョージ・スミスのバイオグラフィをリンクしておきたい。

"JUICY HARMONICA" The Story of George Smith

1999年作品

Thomas Grahn

Claes Parmland


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Downtracked
(CeePeeVee Records CPVCD-501)

  1. Blues Obsession
  2. Last Time I Hear You Pray
  3. The Same Thing
  4. Lonesome La-La
  5. Poormouthin' -1,-2
  6. Somebody's Got To Pay -1,-2
  7. Well, I Done Got Over It
  8. Moanin' For Mollasses -2
  9. Wild, Wild Woman -1
  10. I Walked The Streets
  11. Tighten Up On It -1
  12. Stockyard Blues
  13. Little Girl
  14. Don't Have To Hunt No More
  15. Jivin' At The Swamps -1
  16. I Want A Woman -1

Spcial Guest
-1, Stockholm Slim on Piano
-2, J.T. Holmstrom on Tenor Sax

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好調にアルバムをリリースし続けるBlues Down Townの3rdアルバム。2001年11月8日に発売なったばかりだが、発売に先駆けて出来立てのホヤホヤのアルバムをClaes Parmland氏に送っていただいた。
今回のアルバムの目玉は、なんと言ってもストックホルム・スリムの参加であろう。マジック・サムの「ウエスト・サイド・ソウル」に参加していたあのピアニストである。
彼はスウェーデンに帰国後、「スリムズ・ブルース・ギャング」というバンドを結成し、後身の指導にあたり、セヴェン・ゼッテンバーグ、ステファン・サンドルフ、ペプス・パーソンといった今のスウェーデン・ブルース・シーンを背負うプレイヤー達を育てている。
「スリムズ・ブルース・ギャング」の活動と平行して、ナッピー・ブラウンやルース・ブラウンとの録音や、ニュー・オリンズ・スタイルのジャズ・バンドなどでも活動していたが、1985年頃にゴスペルに転向。今回のアルバムで約15年ぶりにブルース界に復帰したとのことだ。


一番左がストックホルム・スリム
Photo courtesy of "Hemma hos Sumpen" (SWAMP SWLP-791) 1979


アルバムは、ハーモニカとヴォーカルを担当するThomas Grahn作のミディアム・スローのブルースから始まる。ジュニア・ウェルズとジョージ・スミスの奏法を研究したと言うだけあって、典型的なシカゴ・スタイルのブルースだ。再びGrahn作のオリジナルを挟んで、マジック・サム風のイントロで始まるは、なんとマディが歌ったウイリー・ディクソンの"The Same Thing"。サムが「発明」したギターのリフが原曲のイメージを全く壊しているが、これはこれで面白い。この曲にスリムを参加させなかったのは意識的?
お次はなんとサイラス・ホーガンの"Lonesome La-La"。典型的なルイジアナのユルユル・ブルースだ。本来スリムはこの手の曲を得意としているが、ここでもまだ登場しない。
スリムが登場するのは、テキサス・スタイルの"Poormouthin'"。見るからにテキサスが好きそうなClaes Parmland作のインストだ。もう一人のスペシャル・ゲストのJ.T. Holmstromのサックスも気持ちがいい。肝心のスリムだが、ここでは地味にバッキングに徹している。彼は次のスロー・ブルースにも登場するが、決して派手とは言えないが堅実なバッキングでバンドをサポートする。
またしても原曲のイメージを見事に壊した"Well, I Done Got Over It"。ご存知ギター・スリムの曲だが、タイトルを言われなければ気がつかないだろう。続くクールなインストは、なんとジョディ・ウイリアムスが1962年にNikeというマイナー・レーベルに残した曲。ほぼオリジナルに忠実に演奏しているが、よくぞこんな曲を見つけてくるものである。Parmlandのギターもカッコイイが、J.T. のサックスがクール!
"Wild, Wild Woman"と"I Walked The Streets"は、Grahnのオリジナルだが、彼の趣味が色濃く出ている作品。前者はジョージ・スミス風、後者はジュニア・ウェルズ風といった具合である。
ここからは、シカゴの大物のカヴァーが続く。ジョニー・ヤング、フロイド・ジョーンズ、リトル・ウォルターの曲だが、こういったシカゴ・スタイルはお手の物。スリムのサポートも気持ちがいい。
"Jivin' At The Swamps"は、Parmland/Grahn作のニュー・オリンズ風R&B。スリムは、本来ニュー・オリンズ・サウンドに傾倒しており、シカゴへもニュー・オリンズに行ったついでに立ち寄ったという経緯がある。シカゴ系の曲よりも活き活きとピアノを弾いているような印象を受ける。そして最後はジョージ・スミスがソトプレイに吹き込んだ"I Want A Woman"。ブルース・ディスコグラフィの大作「Blues Records」にも載っていなかった珍品中の珍品だ。さすがジョージ・スミス研究の大家である。

問題のストックホルム・スリムは、さほど派手なプレイをしていないが、堅実なサポートに徹していると言うところか。むしろ、J.T. のサックスの方が印象に残る。バンドはまとまっているし、珍しい曲やひねったアレンジなどは相変わらずだが、やはりヴォーカルの弱さが痛い。バンドとしては面白いだけに、今後の課題であろう。

2001年作品


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Everlasting Blues
(CeePeeVee Records CPVCD-701)

  1. Tennessee Woman
  2. You Got To Be Crazy
  3. Mississippi Steamboat
  4. Bad Luck Boy
  5. You Should Have Listened (To My Advise)
  6. Bayou Bounce
  7. Everlasting Love
  8. You Better Watch Yourself
  9. So Unhappy
  10. Stuck In Quicksand
  11. What Do You Do
  12. West Winds Are Blowing
  13. Juke
  14. Honey Bee (Bonus Track)
  15. Further On Up The Road (Bonus Track)

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コンスタントにアルバムを発表し続ける、Blues Down Townの4作目。
いつもながら選曲・アレンジ・録音機材等にマニアックなバンドだが、今回も冒頭からフェントン・ロビンソンがミーティア・レーベルに録音したデビュー作 "Tennessee Woman"、ジョージ・スミスが1980年代にヒッティン・ヘヴィーに残した "You Got To Be Crazy"、再びフェントン・ロビンソンのデュークでの作品 "Mississippi Steamboat" と「好き者」の心をくすぐる曲が並ぶ。

オリジナルは、5曲だがどれも趣味丸出し。ヴォーカル/ハーモニカのTomasはジョージ・スミス研究の第一人者だけあって、ジョージが歌ってもおかしくない曲を書くし、ギターのClaesはお得意のテキサス・スタイルで大活躍。いつもバンドのカラーからちょっと浮いた曲を書くTomas Grahnが今回は曲作りに参加しなかったのは、アルバムに統一感を持たせることに成功しているように思える。

カヴァー曲は、冒頭の3曲の他にも、デトロイト Jr. のデビュー曲 "So Unhappy" や、リッキー・アレンのブライト・スター録音の"What Do You Do" など、如何にも彼らが持ってきそうな「無名曲」が並ぶ。"Juke" や "West Wind Are Blowing" "You Better Watch Yourself" は捻りもなく彼ららしくない。有名曲を前にアレンジが難しいところか。
ボーナス・トラックの2曲はライブ録音だが、こちらもほぼ原曲に忠実に演奏をしている。

今回も、TomasはJMS Harmonica Ampを使用しているが、ClaesはMagnatoneのヴィンテージ・アンプを使用している模様。印象的なトレモロ・サウンドは "You Should Have Listened (To My Advise)" で聴くことができる。

2003年作品


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