J.B. Lenoir's Lyrics

Transcription & Translation by Makoto "Teacher" Takahashi



「Vietnam Blues」(Evidence ECD 26068-2)

GOD'S WORD 「Vietnam Blues」(Evidence ECD 26068-2)

神の約束

俺に大きな変化が来たように感じるんだ
俺が大きな変化を起こすように感じるんだ
神の約束が消えてなくなってしまうことがあるなら
地獄とこの世のなんか、その前に消えてなくなっちまうだろうからな


でも、すごく長く感じるんだよ*
なかなか来ないように感じるんだ
俺の愛する神様は復活して
たくさんの人たちを共に故郷の天国へ連れていってくれる


俺を放してくれよ、悪魔、自由にしてくれよ
そうすれば俺も故郷の天国へ行けるんだ
俺を解放して、悪魔、自由にしてくれよ
俺は故郷へ帰りたいんだ
もし、おまえが、俺が故郷へ帰るのをじゃまするなら、
俺の愛する神様が来て
無理矢理おまえから俺を別れさせてくれるんだぞ


完璧な人は今まで一人だって、いやしなかった
やるべきことを完璧に仕上げた人なんて
おまえたちに善悪を教えるために、神は主(イエス)をこの世に送ったけれど
その仕事を達成する前に神は主を呼び戻された


* I feel like the time is very long
神=イエス・キリストが再び来て、最期の審判を下し、この世が天国のような理想郷に変えられるまで、もう2000年も待ってるわけだから、という意味。


ALABAMA BLUES 「Vietnam Blues」(Evidence ECD 26068-2)

アラバマ・ブルース

俺は絶対アラバマには戻らないぞ
あんなところにはいたくないね
絶対アラバマには帰らないぞ
あんなところに俺の居場所はないね
だって、あそこのヤツらは、俺の姉さんも兄さんも殺しやがったんだぜ
おまけに、あそこの世界*のヤツらみんなが、犯人を釈放して自由にしやがったんだ

アラバマを愛することなんてできないね
だって、アラバマはこのかわいそうな俺を、愛してくれたようには思えないからな
アラバマを好きになんて絶対なれないね
アラバマは今まで一度だってこのかわいそうな俺を、愛してくれたことはないからな
ああ、神様、いつか復活して
俺と同じ黒人の仲間達を平和の国**に導いて下さいよ

おまわりは、俺の兄貴がお袋をかばったからって、兄貴を撃ち殺しやがった
お袋をかばった兄貴を、おまわりは撃ち殺しやがった
時々座って、泣かなくちゃいられなくなるよ
かわいそうな兄貴がいのちを失った時のことを考えて

アラバマ、アラバマ、なんでそんなにひどいことをしたいんだよ?
アラバマ、アラバマ、どうしてそんなに性悪でいたいんだよ?
おまえは俺と同じ黒人の仲間達を鉄条網の中に閉じこめて、
今度は俺の自由まで奪おうとするなんて

* the whole world
世界中: 世界は、地球規模での世界ではなく、多くの場合「その人が知っている世界」あるいは、「その人が暮らす社会」を意味します。
** the land of pea'=the land of peace
南部の英語、特に黒人英語では、単語の最後の子音が発音されないことがあります。ここでは、meと韻を踏ませるために、ルノアーは意識してpea'と発音しています。


BORN DEAD 「Vietnam Blues」(Evidence ECD 26068-2)

生まれながらにして死んでいるようなもの

主よ、どうして私はミシシッピなんかで生まれたのでしょう
ここでは先に進むのが本当にむずかしいのに?
どうしてミシシッピなんかで生まれたんだろう
ここでは、生きていくのが本当にむずかしいのに
ミシシッピで生まれた黒人の子供はみんな、
そんなかわいそうな子は、生まれながらにして死んでいるようなもの

この世界に生まれて来るとき、医者がお尻をたたき、黒人の赤ん坊は泣き出す
黒人の赤ん坊は、この世界に生まれてくるとき、医者にお尻をたたかれて泣き出す
みんな、この子にはいのちがあると思うけれど、
実はその時、その黒人の赤ん坊は死んだんだよ

この子は自分の言葉も満足にしゃべれるようには絶対にならない
このかわいそうな赤ちゃんは、思っていることを話すことは決してできるようにならないよ
ああ主よ、彼は決してきちんと自分の言葉を話せるようにもなれません
このかわいそうな赤ちゃんは、自分が考えていることを表現できるようにはなれません
主よ、かわいそうなこの子は決して理由を理解することはない
いったい、どうしてこんなに貧しくてかわいそうな境遇にいるのかを

主よ、どうして私はミシシッピなんかで生まれたのでしょう
ここでは先に進むのが本当にむずかしいのに?
どうしてミシシッピなんかで生まれたんだろう
ここでは、生きていくのが本当にむずかしいのに
ミシシッピで生まれた黒人の子供はみんな、そんなかわいそうな子は、生まれながらにして死んでいるようなものだよな


Vietnam BLUES 「Vietnam Blues」(Evidence ECD 26068-2)

ベトナム・ブルース

ベトナム、ベトナム、みんなベトナムのことで叫んでいる
ベトナム、ベトナム、みんなベトナムのことで泣いている
でもまもなくヤツらは俺をこのミシシッピで殺し
誰も捜査しようとなんてしないんだ

ああ、神様、もし今私の祈りを聞くことができるなら
はるかベトナムにいる兄弟達をお助け下さい
ああ、主よ、私の祈りが聞こえるのでしたら
遠く、ベトナムにいる兄弟達に力をお貸しください
かわいそうな彼らは穴の中で戦ったり殺したり隠れたりしていて
もしかしたら、自分たちの兄弟を殺そうとしているのかも知れないっていうことも分かってないんです


大統領閣下、あなたはいつも平和のことを大声で言っていますね
だけど、ホワイトハウスを出るときは、しっかり掃除をしなくちゃならないんだからね
平和のことを大きい声でいつも言うもんだけど
そこを出るときはしっかり家の掃除をするんだぞ
いったいなんでおまえなんかが世界に、どんなに平和が必要かなんて言えるんだよ
今でもかわいそうな俺を差別して、殺そうとしているくせしやがって

*文学手法で「囲い込み」というのがありますが、ルノアーはこれを使っています。
最初に自分のおかれた状況をほのめかし、あいだにベトナムや、大統領への苦言を入れ、最後にしっかり話のつじつまをあわせています。


Vietnam 「Vietnam Blues」(Evidence ECD 26068-2)

ベトナム

ああ、主よ、私は質問票を受け取りました
サムおじさん(アメリカ政府)が私をここから遠くへ送ろうとしているのです
ああ、私に質問票が来ちゃった
サムおじさん(アメリカ政府)が俺をここから遠くへ送ろうとしてやがる
サムは「JB、おまえは隠れることはできても、絶対に逃れられないぞ」と
いま、みんなが「おまえをベトナムで必要としているんだぞ」っていうんだ

かわいいひと、お願いだから心配しないでよ
空を飛びはじめたばかりだからって
俺のかわいい恋人、お願いだから心配しないでよ
だんだん気持ちによくなってきたからね
それでむこういったら、ベトナムは俺を撃ち落として
ああ、きみは私の遺体をそこのどこかで見つけるんだ

ああ、主よ、いつになったら、こんな戦争はみな終わりになるんでしょう
ああ、主よ、いったいいつになったら、こんな戦争は終わるんでしょう
ベトナムが罪を犯して私を撃ち落とすと、
私の息子のジェイバー*が立ち上がって、また戦いが続くんですよ

* この息子の名前は聞き取りに自信がありません。でも、Jabir はアラブ系の男の子の名前だから、息子の名前が本当にこの通りの名前だとすると、江戸川スリムさんのルノアーとネイション・オヴ・イスラムとのつながり説に一つエピソードが増えることになります。


DOWN IN MISSISSIPPI 「Vietnam Blues」(Evidence ECD 26068-2)

ダウン・イン・ミシシッピー

物心が付いて以来昔から、
俺はいつもスキかクワかを手にしてたよ
あの長い昔ながらの9フィート(約2m70cm)の袋を持って
昔ながらの土埃の舞い上がる道から(綿を摘み)はじめるんだ
はるか故郷のミシシッピでは

  はるか故郷のミシシッピでは
  俺が生まれたはるか南のミシシッピでは
  俺が育ったはるか故郷のミシシッピでは

ミシシッピに何も反感があるわけじゃないよ
妻の故郷でもあるしね
でも、はるか故郷のミシシッピでの
毎日の生活から抜け出せて
ついてるなあと感じちゃうんだ

  はるか故郷のミシシッピでは
  俺が生まれたはるか南のミシシッピでは
  俺が育ったはるか故郷のミシシッピでは

そこには、ウサギの狩猟禁止期間があったんだ
もしその時に撃ったら、刑務所に入らなくちゃならなかったんだよ
その狩猟禁止期間はいつも5月にはじまるんだ
だれも保釈なんかいらないのさ
はるか故郷のミシシッピでは

*******

高橋"Teacher"誠氏のコメント
江戸川さん、デッシーさん、そして皆さん。
前回の聞き取りと訳を大幅に訂正いたします。
あれからずっと気になっていて、更に何回聴き直したことか!
ウサギをハンティング・シーズン以外の時に撃って、刑務所に入れられたら、綿畑で働くために保釈されたくないって考えたら、歌の意味がすっきり通りました。
1910年に野生の動物を撃って肉を売ったりするのが、法律で禁じらえたこともわかりました。
でも、黒人や田舎の貧しい人々は、主にリス、ウサギ、アライグマ、オポッサムなどを捕まえていたそうです。
裕福な人たちは鹿やウズラやハト、そして狐に七面鳥を撃っていたようです。
でも、南部でのウサギ料理は、冬の料理なので、ウサギを捕っていたのはおそらく秋から冬だと思います。
ハンティング・シーズンは主に、秋から冬にかけて、畑から作物が刈り取られたあとが普通なので、The season was always open on Mayというのも、どうも変です。
このseasonについては、ceasing(中止、中止期間)なんじゃないかと今は思っています。
そうすると、「狩猟中止期間はいつも五月にはじまる」とすると、すべてがすっきりすると思うのですが。
皆さん、ご意見をお聞かせ下さい!!!



「American Folk Blues Festival-Highlights」(Evidence ECD 26087)

SLOW DOWN 「American Folk Blues Festival-Highlights」(Evidence ECD 26087)

スロー・ダウン

スピードを落としてくれよ、もっとゆっくり
俺を乗せてくれ
きみの列車に乗りたいんだよ
行く前に一度だけ

きみはいままで会った中で
一番素敵なかわいこちゃんっていえるよ
俺の隣にきみを手に入れられたら
きみは俺にとってすごく特別な人になるよ

さあいけ、ウォルター

俺は生まれてからずっとホーボーだった、
ずっと放浪生活だよ
どこへ行ったって
満足したことはないよ

スピードを落としてくれよ、ゆっくり!
JBを乗せてくれよ
きみの列車に乗りたくてしょうがないんだ
行く前に一度だけ

俺はいつだってよそ者だった
おれはよそ者なんだ
だから、ここに長くはいられないんだ
きみの列車に乗せてくれたって
なにも不都合はないと思うよ



「J.B. Lenoir His JOB Recordings」 (Paula PCD 4)

IF I GET LUCKY 「J.B. Lenoir His JOB Recordings」 (Paula PCD 4)

イフ・アイ・ゲット・ラッキー

もし、ラッキーなことがあって、故郷へ帰る汽車賃が稼げたら、
もし、ひょっとして運が向いて、故郷へ帰る汽車賃が手に入ったら、
この街から絶対出てやるぞ
もうぜったい帰ってこないんだ

おふくろが言ったよ、JB、足元には気をつけた方がいいわよ
おふくろは座って俺に言ったよ、JB足元には充分気をつけなさいよ
いつかあなたは、ひどいころ転び方をして
誰かの助けがいるようになっちゃうわよ

ねえ、俺の首が、木からぶら下がっているような気分なんだよ
時々、座って、こんな気分におそわれるんだ、
俺の首が木からぶら下がるようなことをしたいみたいな気分にね
悪魔のヤツはおれの親父を殺しただろう?
ああ、主よ、どうか、俺のために悪魔に殺人を犯させないでください

*kill for me:
for がついているので、これを文字通りに訳すと「ああ、主よ、どうか、俺のために悪魔に殺人を犯させないでください」となります。
Lord, don't let the devil kill me「ああ、主よ、どうか、悪魔に俺を殺させないでください」っていうつもりだったけれど、うっかりforを入れちゃったんだとは、どうも私には思えません。
そうじゃないと、「首が木からぶらさがっている」というイメージに毒が効かないもんね。


「Natural Man」 (MCA MVCM-22012)

DON'T TOUCH MY HEAD 「Natural Man」 (MCA MVCM-22012)

ドント・タッチ・マイ・ヘッド

俺の靴はピカピカ、ネイルマニキュアもしてもらったよ、
ダイアモンドの指輪も、いいね、何もかもそろってるよ
だから、俺の頭にさわるなよ
俺の頭にさわるな
さわるなよ俺の頭に
だって、プロセスをやってもらったばっかりなんだからな

この髪のウェイヴを見てくれよ
燦然と輝くばかりのきもちだね
きみも今夜輝きたいかい?
だって俺をノックアウトさせたって
昼も夜もひきずりまわしたってかまわないけど
この頭にさわったら、テメー、ブッ飛ばすぞ
俺の頭にさわるなよ
さわるな、俺の頭に
俺の頭にさわるな
だって、プロセスをやってもらったばっかりなんだ

俺はT-T(TNT=トリニトロトルエン)を飲んでんだ
今度はダイナマイトを吸いはじめよう
もし俺の頭にさわりやがったら
左と右のワン・ツー・パンチだからな
アッパーにサイドに頭部、アッパーにサイドに頭部、アッパーにサイドに頭部、
だって俺の出来立てほやほやのプロセスを台無しにしたんだからな

Transcription & Translation by Makoto "Teacher" Takahashi

(1999年10月1日記)
(1999年10月6日改訂)
(1999年10月20日改訂)
(1999年11月11日改訂)
(1999年11月27日改訂)
(2004年10月5日改訂)


[ Home ] [ Sweet Home Chicago ] [J.B. Lenoir]

Copyright(C) 1999-2002 by Hiroshi Takahashi