スウェーデンのブルース・シーンを紹介するほど聞き込んでいるわけではないが、私が持っている何枚かのアルバムを聴く限り、そのクオリティの高さには驚かされる。
Sven ZetterbergやBluebirdsのPatric Carlsonといった人達は、ギターリストに絶大な支持を得て、apple
Jamさんでもベストセラーになっているという。
ハーピストも相当数活躍しているようで、このページでも何人かのプレイヤーを紹介してきた。
今回紹介するハモニカ・ヘンリーは、先に紹介した「Horton's Briefcase」にも登場し、そのパワフルなハモニカと味のあるボーカルを聴かせていた。
私が彼の存在を知ったのは、ネット・サーフィンをしていて偶然発見した彼らのウェブ・サイトであった。それは、私とスウェーデンのブルース・バンドとの始めての出会いでもあった。
さっそく彼らのアルバムからの曲を試聴してみると、なんとリトル・ウォルターばりのハモニカが飛び出してきたではないか!
私は、さっそくそのアルバムをドイツ経由で注文し、いまでも愛聴盤となっている。
ハモニカ・ヘンリー、本名Jan Sjostrom。1970年代からスウェーデン・ブルース・シーンの牽引車的存在で、Sven
Zetterbergと共に長い間Chicago Expressというバンドで活動を共にしてきた。
1996年にChicago Expressをやめたヘンリーが、ギターのHank Janssonと共に結成したのが、このThe
Blues Rockersである。
そんな彼らが、1999年に発表したのがこのアルバムであり、CeePeeVee Recordsの3枚目にあたる作品だ。
オープニングを飾るのは、ご存じリトル・ウォルターの"Nobody But You"。スウィンギーなシャッフルにヘンリーのパワフルなハープが気持ち良く鳴り響く。ほぼ原曲に忠実なアレンジで、軽くウォーミングアップと言ったところか。
続く"Barefoot Rock"は、なんとジュニア・パーカーが1958年にピーコックに吹き込んだ曲。原曲はホーンが活躍するロッキン・ジャンプ・ブルースだが、ここではジャングルビートに生ハープといったスタイルにアレンジされている。ハモニカも実に良く鳴っている。
"Please Don't Go"は、ローウェル・フルスンがチェスに吹き込んだもの。とにかく太いウォルター・ホートン風のハモニカにしびれる。歌に関しては決して技巧派というわけではないが、それでも雰囲気たっぷりに歌い上げている。原曲のイメージを大切にしながら、見事に自分たちの曲に仕上げているのはさすが。
ルイジアナのブルースマン、アーサー・ガンターの"Baby, You Better Listen"をシカゴ風にアレンジして聴かせた後は、ジミー・ロジャースが1950年に録音した"Goin'
Away Baby"と、サニー・ボーイIIが1960年に録音した"This Old Life"と続く。前者は、マディ、リトル・ウォルター、ビッグ・クロウフォードをバックにつけた"Rolli'
and Tumblin'"スタイルの曲で、後者はロバート・ロックウッドとルーサー・タッカー、ウィリーディクソン、フレッド・ビロウをバックにしたもの。見事なまでにジミー・ロジャース色とサニー・ボーイII色を再現している。シカゴ・ブルースに憧れて長年プレイしてきた彼らにはお手の物なのであろう。
クロマチック・ハープが大活躍の"Yeah, Yeah Baby"。聴いたことがある気がしたが、どうにも思い出せない。そこでクレジットを見てみるとJ.
Mooreとあるではないか。そう、スリム・ハーポの曲である。原曲と聴き比べてみたが、いやー、見る影もない斬新なアレンジ。お見事としか言いようがない。
超スタンダードの"You Don't Love Me"は、有名曲であるだけにアレンジが難しい。あまりにも原曲のイメージから離れすぎると、失敗作と見なされることが多いのだ。その点彼らは、印象的なリフを効果的に使い、若干テンポを落として原曲から極端に脱線しない程度にアレンジされている。
"Sad Hours""Hate To See You Go"とリトル・ウォルターの曲が続くが、こちらは概ね原曲に忠実にプレイをしている。アレンジで勝負と言うより、ヘンリーのハープをたっぷり聴かせるといった狙いだろう。それにしてもいい音を出している。バック陣も大健闘。
再びクロマチック・ハープが登場して、スロー・ブルースを1曲。ハープの感じと言い曲の雰囲気と言いジョージ・スミスの曲かと一瞬思ったが、なんとバディ・ガイが1963年にチェスに録音した"No
Lie"であった。原曲はスゥング・ワルツのリズムを取り入れた異色作。それをこんな重厚なスロー・ブルースに仕上げるなんて.....。
ラストを飾るは、マディの"Evans Shuffle"とジミー・ロジャースの"You're
Sweet"。どちらもシカゴ・ブルース・ファンにはお馴染みの曲だ。
ご覧いただいて分かるように、このアルバムには彼らのオリジナル曲は1曲も入っていない。リトル・ウォルターやジミー・ロジャースらの曲はオリジナルに忠実にプレイし、その他の曲は、見事なまでのアレンジで、まるで彼らのオリジナルであるかのような印象を与える。センスが良いとはこのことを言うのであろう。
さすがにクオリティの高いスウェーデン・ブルース・シーンを引っ張ってきた猛者達である。シカゴ・ブルースに対する深い愛情が作った、素晴らしいアルバムである。
追記
裏ジャケットの写真に使われているヴィンテージ・アンプは、CeePeeVee Recordsのオーナーで、Blues Down TownのギターリストであるClaes Parmland氏が所有する1957製のPremier
Model-120というアンプだそうである。15Wほどの小さなアンプだが「とても素晴らしいサウンドだ」とはParmland氏の談。
ただし、レコーディングには使用されず、ヘンリーが使ったアンプはスウェーデン製のJMS Harmonica Amp。このアンプは、フェンダー・ベースマンのコピー・モデルで、ハモニカ用に改良されているらしい。スウェーデンの小さな会社が何台か作ったらしいが、既に倒産して入手不可能という話もある。
別項で紹介したBlues Down TownのThomas Grahn氏も同じ組み合わせを使用しているとのことだが、彼はその他にも1961年製Fender
Consertと1952年製Fender Pro Ampも使用し、それとAstaticのマイクを組み合わせているらしい。
それを1950年代にノルウェーで作られた真空管のテープ・レコーダーで録音したという。
1999年作品
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