新春特別企画!

The Sons Of Blues & Carlos Johnson

by 丸山実 (The Sons Of Blues)

(2001年1月10日記)


Copyright(C) by Kazuhiro Ogawa


New Year's Eve。20世紀最後の夜。
シカゴではもうすでに3週間ほど雪が溶けておらず、雪国生まれの僕などは心が弾む。この日の僕は、零下10度を下回る寒空の下、数ヶ月前にオープンしたばかりのルースター・ブルースで、所属するサンズ・オブ・ブルースとの演奏をしました(この日で三連ちゃん。次の二日間を入れると五連ちゃんなので、けっこう身体がしんどい...)。対バンはカルロス・ジョンソン・ブルースバンド(注1)。ここルースター・ブルースはキングストン・マインズと同じく2つのバンドが交互に演奏するのです。
普段$7のカバーチャージが、この日は$40(ビュッフェ、シャンペン付き)と、僕の感覚からいくとかなり割り高(後で聞いた話では、例えばもうひとつのシカゴ・ダウンタウンのブルース・クラブ&レストラン、フェイマス・デイブでは$70もチャージしていたそうで、大晦日はどこのブルース・クラブでも高かったのでしょう)。
ルースター・ブルースはもともとキングストン・マインズのボス、ダグ・ペレグリノの右腕として働いていたルーファス(ラスト・ネームを忘れてしまいました)が数ヶ月前にオープンしたクラブ。店の作りから、バンドの演奏スタイルまでいろいろと類似点が多い。そのためか、また他の理由があるのか、2つのクラブの仲の悪さは新聞紙上を騒がせるほど。特にキングストン・マインズ側が腹を立てているようでルースターに出演するバンドは自分のところでは出演させないとの措置を取っている。
これに逆切れしたビリー・ブランチ、カルロス・ジョンソンなどは、キングストン・マインズの舞台に立たないと決別宣言を出し、キングストン・マインズへのボイコットをインターネット上で呼びかけることもしている(注2)。

話をバンドの方へ移しましょう。
まず、凄腕キーボードプレイヤー "マンハッタン" ルーズベルト、ベースにサム・グリーン、ドラムにポーキーを従えたカルロス・ジョンソン・バンド。特にカルロスとルーズベルトの作り出す音。ブルース、R&B、ファンク、ジャズ...。さらにクラシックさえも織り込んで、時には大胆なほど空間を利用した音作りは、場内を圧倒した。スライの"If you want me to stay"で、客の間を練り歩きながらの10分間に及ぶカルロスのソロは、まさに圧巻だった。 
ちなみにカルロスは、この日60年代中期のES-335とRIVERA Duo Twelve(他に使っている人をあまり見かけない)というアンプを使っていた。彼は他にもう一本(家にはもっとたくさん持っているのかもしれませんが...)色違いの赤い335を持っているが、僕の知る限り、最近は前出の物を使う事が多い様だ。アンプではThe Twin(Fender)を使う場合もある。
キーボードのルーズベルトは、J.W.ウイリアムス、リトル・ミルトン、アルバート・キングをはじめとして、数々のバンドで活躍してきた人で、恐らく今のシカゴではトップ3に入るだろう。あのタイム感というかフィーリングというか、語彙の少ない僕ではとても書き表せない演奏を聞かせてくれる。     
それにしても、カルロスがまだ自分のリーダーアルバムを作ったことがないというのは、信じがたい話であるし、非常にもったいない。ブルースマンの常で、カルロスが60歳を超え体力が衰えた頃になって、初めて誰かが彼のCDを作ろうとするのであろうか...。


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さて 本ホームページにコーナーを持つワビさんのソウル・ブラザーであるビリー・ブランチ率いるS.O.B.(サンズ・オブ・ブルース)。今日は大晦日なので、メンバー全員スーツ又はジャケット姿でヒップ(?)にきめている(実は、ぼくはそれとは知らず、普通の格好で来てしまい、急遽彼女に電話をして一張羅のスーツを届けてもらったのですが...)。それにしても黒人のみなさんはスーツが良く似合う。ぼくだけ七五三の様で格好悪いのが気に入らない。
S.O.B.のメンバーは、キーボードに我ら日本人の星"ARIYO"こと有吉須美人さん、ベースにニック・チャールズ、ドラムにモーズ・ルータス。ご存じの通り有吉さんは、80年代にシカゴでバレリー・ウェリントン、ジミー・ロジャースなどのバンドで活躍。その後、日本で幅広い活動をした後、現在再びシカゴで活動を始めている。
ベースのニックは、ハウリン・ウルフ、バレリー・ウェリントン、チック・ロジャースはじめ、これまた多数のビックネームとPlayしてきたベテラン(見た感じ30・40代に見えるけれど本当は結構年寄り)。でも演奏の方はブルースの枠にはまらない、自由で若々しいベースを弾くので、ぼくは結構好きです。

いつもの様にサン・オブ・ジュークではじまった第一セット。隣のカルロス・ジョンソン・バンドを意識してか、みんなのプレイが熱い!慣れないスーツなど着ているのでステージ上は文字どうり熱かった。ミーターズのシシー・ストラウトで始まった第二セット。ニックズ・グルーヴで始まった第三セットともに、ビリーさんが風邪でジェームス・コットンの様な声だったにもかかわらず、いつにも増して熱い演奏だったと思う。お客さんもみんな踊ってくれて...。僕の個人的な好みでは、やはりビリー・ブランチは、ザッツ・オーライなどローダウンな曲のときの長いソロ(いつもステージの下に降りてお客さんの目の前で吹く)や、人が歌っているとき、ソロを弾いているときのバッキングがすばらしいと思った。
ビリーさんはこの日PEYVEYのSpecial 130というアンプと、ドラムをひろう時に使うような細長いマイク(注3)を使用していた。また、デジタル・ディレイ、オクターバー、の2つのエフェクターも時折使っていた(ハモニカでディレイを使う人は、他にも何人か見たことがあります…使い方は知りませんけど…)。
ちなみに、「俺は、日本人と一緒に育ったんだ」と本人が言うように、子供の頃L.A.で通っていた学校にはたくさんの日本人(日系人)がいたそうで、日本人には友好的。


Copyright(C) by Kazuhiro Ogawa

ビュッフェ、シャンペン付きで$40と安くない入場料に加えて、今年の異常な積雪で客の入りが心配ではあったけれど、11時前後には立ち見が出るほどの満員になり、21世紀の第一歩を記すにふさわしい盛り上がりでした。ちなみに、ケイジャン風な味付けのB.B.Qチキンなど、食べ物もおいしかった。
ルースター・ブルースでは、ビリー・ブランチは毎週火曜、カルロス・ジョンソンは毎週日曜、その他水曜日にはカール・ウェザズビーなどもやっています。
なにか、ルースター・ブルースの宣伝のようになってしまいましたが....

みなさん、良いお年を!


江戸川スリムのお節介注釈

(注1) Carlos Johnson
知る人ぞ知る、シカゴでも三本の指に入る名ギタリスト。2001年発売の唯一のリーダー作がアルゼンチン盤であるために、知名度は今一つ低いが、彼の演奏を体験した人は例外なくノックアウトされるであろう。(このアルバムはapple Jamで販売しています。通販も利用できるのでメールでお問い合わせ下さい)
ちなみに私は「カルロスを日本に呼ぶ会」の会長を務めている。

(注2) インターネットでボイコットの呼びかけ
ここの掲示板から過去ログを参照のこと。

(注3) ビリーのマイク
この辺の話は、Sweet Home Chicagoの"Billy Branch Intervew"で彼自身が説明している。


Billy Branch Disc Guide

V.A.
Bring Me Another Half-a-Pint!

(Barrelhouse LP-09)

V.A.
Living Chicago Blues vol.3

(Alligator ALCD-7703)

Lurrie Bell & Billy Branch
Chicago's Young Blues Generatuon !

(L+R LP-42.049)

The Sons Of Blues
Live '82

(Evidence ECD-26049)

The Sons Of Blues
Where's My Money ?

(Evidence ECD-26069)

The Sons Of Blues
Romancing The Blue Stone

(Black & Blue BB-728.2)

V.A.
The New Bluebloods

(Alligator ALCD-7707)

V.A.
Harp Attack !

(Alligator ALCD-4790)

Hubert Sumlin & Billy Branch
Chicago Blues Session vol.22

(Wolf-120868 CD)

The Sons Of Blues
Mississippi Flashback

(GBW Records GBW-005)

Billy Branch
The Blues Keep Follow Me Around

(Verve -5272682)

Billy Branch
Satisfy Me

(Verve -5333942)

V.A.
The Story Of Blues

(apple Jamで取扱中!)

V.A.
Superharps

(TELARC CD-83472)

Sam Cockrell
I'm In The Business

(Boom Boom BB-278)

この他にも、ゲストで参加作品多数あり。


Carlos Johnson Disc Guide

Son Seals
Bad Axe

(Alligator ALCD 4738)

Valerie Wellington
Life in the Big City

(GBW -002)

The Matthew Skoller Band
Bone to Pick With You
(Tongue 'N Groove Records)

The Matthew Skoller Band
Shoulder To The Wind
(Tongue 'N Groove Records)

Carlos Johnson
My Name Is Carlos Johnson

(Blues Special Records BSCD-9503)

この他に、上記The Sons Of Bluesの"Where's My Money ?"にも参加。


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