Robert Lockwood Jr.

by 細沼忠夫 (ex-Harmonica Hinds Band)

(2001年6月21日記)


At Chicago Blues Festival 1991


「アフターブルースフェスパーティ」と名を打ったロバート Jr. ロックウッドのギグは、ブルース・フェスの会場から程近い「ホットハウス」という場所で行われました。ここはシカゴで活動しているピアニストの野毛洋子さんが毎週月曜日に演奏していることでも有名です。

僕自身ロックウッドの演奏を聞くのは今回で3回目だと思います。最初にロバートを見たのは4年前、シカゴ郊外のパラタインという町にあるブルーノートシカゴでだと思います。オハイオ州クリーブランドに住んでいる彼が、シカゴでショウをやることはまれだったので、2月の大雪の中、遠いところまでタクシーで出かけていったのを良く覚えています。このときはロックウッドの他、ベース、ドラムにサイドギター、キーボードにハモニカ、そしてテナーサックスという編成でした。ロックウッドは赤い12弦のセミアコを弾いていました。このバンドからみてバリバリのシカゴブルースをやるのかなと思ったけど、彼本来の持ち味であるロバート・ジョンソンなどの曲をプレイしていました。
レコードでしか聞いたことがなかった、シカゴブルースの生きる伝説に始めて会えたとあって興奮しきっていた僕は「あなたに会いに遠いところからやってきました」と話し掛けると「おまえは日本人だろ。日本の人には親切にしてもらったので良い思い出がたくさんあるよ。日本にはブルースが好きな人が多いね。」と親切な答えが返ってきました。「日本にはあなたに憧れている人がたくさんいますよ。」というと「それはどうもありがとう」と実に紳士的に対応をしてくれたので、ブルースマンとはかくあるべきかと感嘆しました。このとき一緒にとってもらった写真は、今でも僕のお気に入りで部屋に飾っています。

2回目は2年位前のブルースフェスでだと思います。このときはクロスロードステージでの自分のバンド演奏の他に、フロントポーチステージでデイブ・マイヤーズとの共演がありました。彼らをサポートしたのは、リトル・ウォルター全開といった感じのキム・ウィルソンがハモニカで、ドラムはケニー・スミスでした。ベースは誰だったかちょっと思い出せません。クロスロードステージの方は前回と差ほど変わりがなかったのですが、デイブ・マイヤーズとの演奏の方は、デイブがちょうどCDをリリースしたということもあり、ダウンホームなスタイルが多く、オリジネーターがやる本物のシカゴブルースが聞けたと感動したのを覚えています。このときもロックウッドは12弦のギターを弾いていました。「オーベイビー」などでの彼のプレイはやはり筆舌に値するものがありました。


at Chicago Blues Festival 1991

そして今回のショウはシカゴリーダーという地元情報誌の紹介によると、ジョン・マクドナルドとの共演とありました。ジョン・マクドナルドはシカゴで活動している、ダウンホームなスタイルを得意とする人なので、典型的なシカゴブルースが聞けるのかと期待しました。ロックウッドの演奏は10時からとありましたが、僕が10時過ぎについた時には、まだジャズピアノをバックに詩と歌をおりまぜたスタイルの人がやっていました。ロックウッドは既にバーに腰を下ろして出番を待っていました。今日は半そでのシャツとズボンを青一色に統一し、黒いハンチング帽で爽やかにきめています。

前の人が終わると、ステージ上にジャズコーラスとベースアンプ、そしてドラムセットが配置され、いよいよロバートが登場かと思いましたが、ジョン・マクドナルドがエピフォンのフルアコを持って一人で舞台に現れ、「リトルレッドルースター」や「キートゥザハイウェイ」などをデルタっぽいスタイルで弾き語りし始めました。ジョンは4、5曲やったところでロバートを紹介し舞台を退きました。今回のショウはジョンとロックウッドの共演という形ではなく、ジョン・マクドナルドが前座を務めるといった形のようです。この頃にはホットハウスも大勢のひとで埋め尽くされ、シカゴブルースフェス初出場となったハーププレーヤーのロブ・ストーンといった連中や、最近復活したジョディ・ウイリアムスも若い女の子とロニー・ベーカー・ブルックスを連れ立って現れました。ロックウッドは「ブルース」という最近出来た、青い色のギターだけを作る会社の12弦ギターを使っていました。ピックアップガードには自らの名前が掘り込まれているようです。

ステージでただ一人、簡単に挨拶すると「シーシーライダー」や「ストップブレイキンダウン」などを弾き始めました。彼の華麗なコードワークは、巷にあふれているスクィーズ系の音とは違い新鮮に響いて来ます。満員の観客も騒ぐことなく、ブルースの巨人の演奏を、固唾を飲んで見守っているといった感じです。5曲やったところでロックウッドと長年連れ添っているベースプレーヤーのジミー・ソーツが加わり、ロックウッドのスタイルも少しずつソロが増え、モダンへと変化していきました。さらにはドラムも加わりバンドサウンドとなりました。ブルースの歴史そのものを体現している彼のプレイは威厳に満ちて堂々としたものでした。彼の弾き出すコードの美しさはいつ聞いてもすばらしいものですね。ファーストセット最後に聞かせてくれたインスト曲は、ソニーボーイのバックでやっていたようなプレイで良い感じでした。ジョンマクドナルドの演奏をはさんでのセカンドセットは、基本的に最初と同じく一人で始めて後にバンドになるという形でしたが、今度はロックウッドのリクエストでジョンもステージに加わりました。僕はジョディウィリアムスやロニーベーカーも加わるのかなと期待しましたが、彼らはサッサと帰ってしまったようです(笑)。


Robert Lockwood Jr. & Buddy Guy, 1993


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