ジョディー ウィリアムス(注1)。
ぼくは、10年以上シカゴに住んでいるわけですが、彼の演奏を観るのは今回がはじめてです。なんと30年以上もギターを弾いていなかったと言う事ですが、赤のギブソン345が良く似合っていて、まるで50年代のシカゴからそのまま何かの間違いでひょっこり現れたと言う感じでした。
何と言っても彼の音と音さばきが、古いレコードそのままなので「プロのギター弾きとはこういうものだったのか」と一人で興奮してしまいました。
この夜は、「ブルース・ビフォー・サンライズ」(恐らく世界でも3本の指に入るブルース専門のラジオ番組。WBEZ 91.5FM)のファンドレイズのためにジョディーのほか、マディ・バンドのドラマー、ウィリー・スミスとアイスクリーム・マン、シカゴ・バウンド、ブルーエンジェル、それからぼくのバンド(ライジングサン・ブルース・バンド)が集められた訳です。
しかし、ライジングサン・ブルース・バンド?これがぼく達の事らしいです...。誰が名づけたかは知りませんが。いっその事ハラキリの方が印象的だったかも?(笑)
ウィリー・スミスは、最近ではドラムよりもハーモニカと歌に専念している様です。実際、マディバンドに入る前はハーモニカ・プレイヤーだったと言う事でした。この日のバックのアイスクリーム・マンは皆白人で、ドラムにスティーブ・クッシン(ぼくの愛するダブル・シャッフラー)、ベースはマイク、ギターにイリノイ・スリムとデイブ・ウォールドマン(彼は、ハモニカ・プレイヤーとしてもローカルでは有名です)。
これを日本で読む皆さんには分かりづらいとは思いますが、この連中が集まったら、最初から最後までシカゴ・サウンド。この手のノリの好きな人にはお勧めです(注2)。
ジョディーは、まるで衰えを見せていませんでした。この夜は関係者も多く見に来ておりプロデューサーのディック・シャーマンの顔もありました。
バックは先程のスティーブ、マイクそしてジョーが入り、シンプルな4ピース。ハウリン・ウルフのあのサウンドを支えた彼ももう70才は越えているでしょう。よくヒュウバート・サムリンと比べる人もいますが、ぼくはどちらも尊敬しています。
音楽から離れてもう30年以上。彼はTVや電気製品の修理工を経て、現在はコンピューター関連のエンジニヤで生計を立てているという事です。
彼はとても温厚でいつも笑顔を絶やしません。彼とのやり取りの中で、彼は「当時(50年代頃)誰もブルースを演奏して大金を手にした奴はいなかった」と言っていました。それは、今も昔もそれほど変わりはない様ですね(笑)。
「オレがチェスでの録音していたら、たまたまジュニア・ウェルズがスタジオにやっ
て来て"曲があるが、チェスでやる気はないか?"と当時の社長に尋ねたんだ。社長は"もしおれ(ジョディ)がその曲を録音するなら話に乗る"とジュニアに言ったところ、ジュニアは断って出て行った。オレは、その後を追いかけて「その曲をオレにくれないか?」と持ちかけた。結局オレは、その曲をジュニアから$12で手に入れて、その日録音したのさ。今では何て曲だったのかも思い出せないけど。ガハハ!」
この夜は、面白い話をたくさん聞かせていただきました。
江戸川スリムのお節介注釈
(注1)Jody Williams
本名ジョセフ・レオン・ウイリアムス。1935年2月3日にアラバマに生まれるが、6歳の時にはシカゴに移り住む。
CD"Cool Playing Blues" のライナーノートに「シカゴでもっとも早くからストリングベンダー(チョーキング)を使用し、B.B.キングとT-ボーン・ウォーカーを合わせたようなスタイル」と書かれている様に、マディ等のダウンホームなスタイルとは一線を画した彼のプレイは、シカゴ・モダン・スタイルの祖と言っても過言ではないであろう。
ハウリン・ウルフとの共演が有名だが、ボ・ディドリーからビリー・ボーイ・アーノルド、果てはアイク・タナーとの共演もしている。
最初の自己名義録音は1955年のこと。ブルー・レイクに対する4曲("Cool Playing Blues"
RELIC 7016)だが、サックスが入りアーバナイズされたサウンドは、まるでコブラ・サウンドだ!
1957年にはチェスへ6曲録音しているが、その内のマイナー・キーのインスト「Lucky Lou」("Chess
Blues Guitar" (MCA 9393)他で聴ける)は、オーティス・ラッシュの「All Your Love」のモデルになっていることは明らかだ。
未LP/CD化の曲も多いが、1960年録音の2曲は"When Girls Do It" (Red Lightnin'
RL 006)で聴くことが出来る。
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Cool Playing Blues
(RELIC 7016) |
Chess Blues Guitar
(MCA 9393) |
When Girls Do It
(Red Lightnin' LP RL 006) |
(注2)The Icecream Man
まさに通好みとしか形容のしようがない「地味な」バンド。ギター&ハープのデイブ・ウォールドマンは一貫してこのバンドに在籍しているので、彼がバンド・リーダーと思われる(余談になるが、日系ハーピストのケン川島は、ウォールドマンの影響を強く受けている)。
古くはオーティス"ビッグ・スモーキー"スマサーズの"Got My Eyes On You"
(Red Beans RB009)で彼らのサポート振りが聴けるが、最近ではデルマークのCDに度々登場し、50年代シカゴのサウンドを見事に再現している。
"Blues Before Sunrise"(DELMARK DE-699)では、ウォールドマンのギターとハープの両方が聴けるし、クッシンのダブル・シャッフルも充分に堪能できる。また、ビッグ・ホェーラーの"Bone
Orchard"(DELMARK DE-661)にはwith The Icecream Manのクレジットがされている。
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Got My Eyes On You
(Red Beans LP RB009) |
Bone Orchard
(DELMARK DE-661) |
Blues Before Sunrise
(DELMARK DE-699) |
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