傀儡 (くぐつ) のよしなしごと 1 [ 2001年8月 ] |
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2001年8月20日
シカゴに戻って一ヵ月が経った。今月からアパートリース出来るようになって、自動車免許、銀行口座、携帯と家の電話、車、器材、そしてiMacと、生活に必要な物は全て整う。
シカゴは8マイル以内のローカルコールが一通話¢5。ビバ、ネット天国! (昔の日本も市内通話が10円で時間無制限だったから、話好きのあばさんはタバコ屋の店先の赤電話を放さなかった)
今月は週2のレギュラークラブと単発で10本程だが、相変わらずのシカゴ、ギャラが安い。ビリー・ブランチと
The Sons of Blues はオレをレギュラーにしてもっと上のクラスへと意欲的だが . . . . 。
またブルースピアニストも評判になるような若い者が不在で、マイナー8ビートの曲が主流の今日、今後も期待できそうにない。生ピアノを常設のクラブが一軒のみ
(Rosa's Lounge) になってしまっては致し方無し。
2001年8月22日
芸能ビザ関係専門の弁護士と2時間 (1時間 $150 _ 約2万円) 喋ってきた。金金金金!60階建ての豪華ビルの角部屋に通されて、あなたのケースは平均これ
$ 程掛かります、よろしいですわ、お金など幾らでもございますもの、ホホホホホホ . . . . . . .トホホホホホホ
. . . . . . . .
2001年8月27日
今回の連ちゃんはちょっときつかった。
ちなみに今日は2カ所 {家→車→会場(演奏)→車→クラブ(演奏)→車→家} の器材搬入搬出と演奏を、ご飯休憩ナシで続けた。
キーボード(20Kg)、スピーカー(30kg)、椅子とスタンド(10kg)、アンプヘッド(5kg)、ハンドトラック(10kg)。
大変なのは路上に停めた車と車に残してる器材を、警察と盗人に気を付けながら作業する事。一度に運べたら楽だけど . . . .
。おまけにアパートの部屋は二階。
たまに唄いに来る黒人の着飾ったおばさんに結婚してるかどうか聞かれた。
オレの歳なんぼや思とんねん!
2001年8月28日
連ちゃんやっと終わった ♥
昨日のカントリークラブでの小コンサートのギャラ貰う。夜フルタイムで演奏したクラブより多かったので、ちょっと幸せになる。
今夜は黒人街のクラブ "Artis's"。カウンターでオレンジジュース(下戸)を注文したら、バーテンダーが「あちらのお客さまからです」って金を受け取らない
(元々出演者はソフトドリンクがタダなので、チップを渡そうとした)。
少し離れたところで、自分のグラスをちょっと上げてウインクする黒人のおねぇさんがいる。映画の世界?でも実際されたら戸惑ってしまう。そんな色気をだされてもオレの中身は日本人だし・・・逆に引いてしまった。
お礼の挨拶をすると、
「前からあなたの事 Cute (大人の会話では、ステキと訳す) だなぁって思ってたの」
((どないせえゆ〜ねん!))
「オレ結婚してます」
と言うとちょっと顔しかめてから、
「それじゃピアノ教えて、それぐらいはイイでしょ?」
スツールに座った彼女の横で立っているオレの腰を引き寄せる。顔と顔が極端に近付いてしまった。それ以上顔を近付けなくする為に、
「Why not, anytime」
と、笑顔で彼女の肩に置いた手をパンパンしてやった。
もう一人の自分自身が店の角で上目遣いにこっちを見ている。
何か面倒臭い。
いっぺんこんな(。。)(゜゜)(/~~)/\(¨\)顔して遊びまくったろか?
2001年 8月30日
最近仕事が終わってから寄る24時間営業のレストラン。今夜はいつものウエイトレスの姿が見えない。
メキシカンのバスボーイ(片づけるだけの人)とコックがオレを迎えてくれた。背の低い二人が一生懸命にサービスをするのは可笑しかったけど、コック!がオーダーを取りにきて、たどたどしい英語で話し始めると少し気掛かりになってきた。食べ終わって精算するにはレジを開けなければならない。確かいつもあの金髪のウエイトレスが鍵を持っていたと思ったけど.
. . . 。
オレの心配をよそに、二人はむしろ生き生きとウエイターの仕事をしている。ひょっとして彼女は殺されて、二人に店を乗っ取られたのではないだろか
. . . . 。
料理が運ばれてからも、マメに"Are you OK ?"と尋ねてくる。オレの頭に浮かんだ疑念はなかなか払拭されない。見よう見まねで覚えた二人の接客が、蔑まれても懸命に生きているメキシカンの悲哀に思えてならなかった。
スープとたまごサラダサンドは美味しかったが、ひどい鼻声のウエイトレスが鍵束をじゃらじゃら鳴らせて戻って来た時の、彼等の表情は少し悲し気だった。自分の境遇と二人に余り違いがない事をオレは知っていたし、レジの鍵の件はもうどうでも良かった。
精算を済ますといつもより多い目のチップを置き、二人に丁寧な挨拶をして表へ出た。
最後まで客はオレ一人だった。
2001年8月31日
ウエストサイドへエディ・テイラー Jr. を送っていく途中で喧嘩ーーといっても一方的に殴られてるやつを続けて2回見た。一人は4,5人に袋叩きにされていて、車で通り過ぎる時「Help!」って叫んでこちらに向かって来た。直ぐに引きずられていったが、同乗していたエディの顔を一瞬見てオレは諦めた。警察を呼んだところで2時間程しないとやって来ないらしい。
真夜中の夏の黒人街、後味が悪い。
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