The Curtis Sumter Project
Trials and Tribulations
(No Cover Productions NCP-021)

  1. Ain't Doing Too Bad
  2. Hip Shakin' Momma
  3. You're Just Another Reason
  4. Day Going Down Wrong
  5. You Don't Know What Love Is
  6. Let's Straighten It Out
  7. I'd Rather Go Blind
  8. Afraid To Love
  9. Broke
  10. I've Been Talkin'

"Ain't Doing Too Bad""Hip Shakin' Momma""I've Been Talkin'"の3曲は、ここから試聴できます。


デトロイトから、ファンキーでソウルフルなアルバムが届いた。カーティス・サムターが率いる、The Curtis Sumter Projectのデビュー・アルバムである。
The Curtis Sumter Projectは、ヴォーカル/ドラムスのカーティス・サムターを中心に1992年にデトロイトで結成された。オリジナルのメンバーは、カーティスの他にギターのロン・レイサム、ベースのダニエル・スペイトであったが、直後に当時19歳だったジョシュ・フォード(モーター・シティ・ジョシュ)とヴォーカルのキャシー・デイヴィス、そしてベースのポール・ベイカーが加入し、デトロイトを中心に精力的な活動を続けていた。
その後、1996年にジョシュが、1998年にキャシーがそれぞれのバンドを作るために独立し、現在のメンバーは、ジョー・ベロス、リッチ・ハン、ジム・デヴィッド、デイブ・ワトソンという5人編成で活動を続けている。

このアルバムは、昔のメンバーだったジョシュ・フォード、キャシー・デイヴィス、ポール・ベイカーを中心に録音されたものである。さらにギターやキーボードのゲストにホーン陣の参加で厚みのあるサウンドが作り出されている。


オープニングはドン・ロビー作(んなわけないか)で、ボビー・ブランドがデューク/ピーコック時代に吹き込んだ"Ain't Doing Too Bad"。マジック・スリムやヴァンス・ケリーなども取り上げているが、ここではジェームス・コットン・バンドのアレンジを参考にし、ファンキー・ブルースに仕上げている。カーティスの野太いヴォーカルは迫力があるし、ホーンもバッチリ決まっている。ジョシュはカッティングに専念しているようだが、これがメチャクチャ格好いい!!
続く"Hip Shakin' Momma"は、キャシーが歌うオリジナル・ナンバー。これまたファンキーでグルービーなサウンドに仕上がっている。
ファンク・ブルースが2曲続いた後は、ジョシュとキャシーの共作によるバラード・ナンバー。ジョシュのカラーが色濃く出ている作品だ。それぞれが交互にヴォーカルを取るが、メンバー中唯一の白人であるジョシュも負けじとソウルフルなヴォーカルを聴かせている。
ジョシュのギターで始まるスロー・ブルースは、ゲストでオリジナル・メンバーのロン・レイサムの作品。ヴォーカルも彼自身が取っているようだ。"You Don't Know What Love Is"は、フェントン・ロビンソンがPMに残した作品。彼の独特の歌い回しを残しつつも、見事にファンキー・ブルースにアレンジしてあるのもさすがだ。リードにバッキングにジョシュのギターが大活躍!
続く"Let's Straighten It Out"は、マイケル・コールマンやカルロス・ジョンソン、そして菊田俊介(J.W. ウイリアムス)などのシカゴのブルースマンも好んで取り上げるラティモアの作品。多くのカヴァー・ナンバーがオリジナルに忠実にミディアム〜スローのアレンジでプレイをしているが、ここではミディアム〜アップでファンキーにアレンジされている。リズム隊はうねり、ジョシュのギターもリード/バッキング共に絶好調だ。キャシーの歌の良さは言うまでもなし。く〜、気持ちいい!
盛り上がったところで、エタ・ジェームスのスロー・バラード"I'd Rather Go Blind"を、キャシーがしっとりと歌う。最近自身のアコースティック・アルバムを出したジョシュのアコ・ギターも歌っている。"Let's Straighten It Out"〜"I'd Rather Go Blind"の流れは、このアルバム中最大の聞き所ではないだろうか。
キャシー自作の"Afraid To Love"を軽く決めた後は、なんと1950年代に活躍したホンカーのチャック・ヒギンス作の"Broke"。一体誰の選曲なのだろうか。
ラストを飾るは、ストレンジ・ブルーという白人ロッキン・ブルース・バンドが取り上げていた"I've Been Talkin'"。もちろんファンク・ブルースにアレンジしてあるが、ジョシュのカッティングがこのバンドの要であるだけに、彼がリードに専念しているのが惜しまれる。


不満な点が全くないわけではないが、最近の新録の中ではとびきり活きのいい作品であることは間違いない。久しぶりに再会したメンバーとは思えないグルーブ感。アレンジの巧さを含めてアルバムの完成度はかなり高い。
デトロイトのブルース・シーンは、まだこんなに素晴らしいミュージシャンを「隠して」いるのだろうか?

2001年作品


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